No.18『 孤独の世界 3 』

kneedrop22009-11-05

『 孤独の世界 3 』  作詩:五十嵐精一


彼に似合う心は灰色で毎日を眠りの時に置く
時計の針もしっかり止まっていて
昨日の事も忘れた振りで今日を繕い生きる
うす汚れたジャンパーのポケットには
タバコと映画の半券
家路をしっかり歩き始める
疲れた夕暮れがちかづくと
TVは賑わいの中からこららに情けを送り続ける
だから彼は仕方なく作業を始める



殺人や亡命や横領の問題で世界は回る
彼の怒りはすっかり消えていて
明日の事も考えないで今日をただ生きる
うす汚れたジャンパーの袖も
すっかりほころびてしまい
家路をかすかに歩き続ける
オレンジの朝がちかづくと
TVは近所の窓からこちらにバカを送り続ける
だから彼はいらつき作業を続ける



誰にも会えないし 会わないし 会いたくない
彼をすっかり眠りに誘うのは
朝の眩しい光だけだから 今日もそっと生きる
うす汚れたジャンパーのポケットには
モダンな妄想が染み付いて
家路をよろめきやっと帰る
彼の口ぐせはいつも決まってあとすこしたったら
反撃してやろうじゃねえか
そして彼は夜の奥で作業を終えた

               
             1979年作品






















































The Poetic Works of Seiichi Igarashi