No.9『 心という港は 』 

kneedrop22009-09-27

『 心という港は  』 
     作詩:五十嵐精一


 口は言葉を吐こうともせず
 声を出しても叫びにならない
 片足はいつも坂道で動かず
 両腕をひろげることは出来ない


 確かに夜は夜はとおく 
 夢は狂い出しているから
 心という港は何故か
 毎日 晴れようとしない


 軽い愛をたずさえて
 暮らしてゆくことは
 生きるうえにきついことだと



 眼は両方とも閉じてしまい
 視界もしっかり失ってしまった
 右足だけで坂道は登れず
 背中もいつしか曲がり始めた


 確かに朝は朝はとおく 
 陽は遠ざかり始めた
 心という港は確かに
 いつも 晴れようとしない


 重い過去をひきずって
 生きてゆくことは
 人を傷つけることにつながる


            1979年作品















































The Poetic Works of Seiichi Igarashi